薬剤師スピリッツ
プロとしての自覚
株式会社コメヤ薬局(石川県)
代表取締役 長基 健司
本社:石川県 出店エリア:石川県 店舗数:22店舗
設立:1946年 従業員数:235名
沿革を拝見し、慶長期(江戸時代後期)が創業で400年以上の歴史を誇る薬局ということを知り、緊張とワクワク感を抱きながら取材に向かった。長い歴史がある会社の時代の変化の捉え方や考え方などを長基社長に聞いてみた。
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長い歴史のコメヤさんですが、社長で何代目になりますでしょうか?
私で14代目です。江戸時代後期の慶長期が起源です。日本一長いんじゃないかなぁって・・・(笑)。元は、酒造りと薬をつくっていたことから始まっています。前田家のお殿様やお姫様が訪れる場所だったようです。
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社長は薬剤師ですが、代々の社長も薬剤師ですか?
そうですね。これまで全員が薬剤師です。薬剤師スピリッツが代々受け継がれています。薬科大学を卒業して、すぐに当社に入社をしませんでした。当時は、今のような保険薬局もほとんどなかったですし、ドラッグストアもなかったこともありましたが、薬を極めたいという思いから漢方専門の薬局に修行に出ました。東洋医学を極めるには、漢方だけではなく、鍼灸もしっかりと学ばなければならないので、鍼灸の学校にも漢方薬局に勤めながら通いました。薬剤師は、人の体に触れることができませんが、鍼灸は触診もできますし良い学びとなりました。薬学の道を極めて、的確に患者さんを診たいという思いでした。その後石川に戻り、鍼灸を磨きたかったので病院で少し修行して、当社に戻り鍼灸と漢方治療を鶴来本店に併設して始めたのが当社でのスタートとなります。
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ドラッグストアチェーンになるまでは、街のおくすり屋さん、漢方・鍼灸だったということですね
そうですね。実家に戻ってきたある時、アメリカ研修があるということを知り、興味本位というか物見遊山的な感覚で参加したのですが、アメリカのドラッグストアというものを見ることで刺激はもちろんのこと衝撃を受けました。見学に出向いたドラッグストアの店長に誇りに思うことは何かと聴いたら「誇りは自社の薬剤師です。その薬剤師は地域の皆さんの家族構成から病歴、健康状態を把握し、皆さんから信頼されていること」と応えがかえってきました。日本では「街の薬局のおっちゃん」くらいしか思われていない時代だったので、このようなドラッグストアという業務形態をしていかなければならないと気づかされました。今では当たり前のように思うことだと思いますが、当時はまだまだでしたからね。
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刺激を受けられてから、現在の「コメヤ」が始まったのですね
「街の薬局・薬店」「漢方薬局・鍼灸院」をやり続けるのももちろん良いことですが、一人でそれをすることよりも、薬剤師の地位向上、薬局の存在を知ってもらうことが大切だなぁと感じたことで、ドラッグストアを石川で展開したいという気持ちになり始まりました。このような思いの実現のために、医薬分業が始まる前から小さな調剤室をつくりドラッグストアを始めました。調剤をすることだけが仕事ではなく、お客様の生活背景を見て健康に対する相談、薬の相談、生活指導ができるようにならなければならないと考えています。調剤ができれば良いではなく、お客様・患者様となる人を見て薬剤師の仕事をしていかなければならないです。薬剤師スピリッツを大切にしたいと考えて会社経営をし続けています。
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そのような思いを持ち続け、今後の展開はどのように考えていますか?
薬剤師、ドラッグストアの仕事は、相手をしっかりと見ること・知ることであるので、大量にむやみやたらに出店することが経営と私は考えていません。いいかげんなお客様・患者様対応になってはならないと考えています。薬剤師の心がこもったお店であり、会社であり続けたいという気持ちが強いです。展開をしていくというよりは、そのような薬剤師を育てていきたいと思っています。
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社長の思いを継承していくために、どのような薬剤師育成をされていますか?
新入社員が入社してからは、しっかりと育てたいという気持ちから、入社後2ヶ月間はお客様・患者様の前に出さずに研修を行っています。その後、すぐに店舗・薬局配属はせずOJT研修を1~2ヵ月行ないます。 勉強とトレーニングですね。即戦力になるまで教えてから、店に出てもらっています。厳しいように感じるかもしれませんが、安心してお客様の前に立てた方が新入社員も安心して仕事ができますし、自信を持ってお客様対応ができるようになります。薬の知識ばかりで頭でっかちでは、仕事ができないですよね。そのためにも、会社の考え方やこれまでの歴史もしっかりと理解してもらっています。
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どのような薬剤師を求めていますか?
ありきたりですが、明るさ、ポジティブな人柄がいいです。何よりも「ありがとう」という感謝の気持ちを持ってもらえるような人柄が大切です。このような方であれば、お客様・患者様のために儲けだけを考えずに、その方に合ったお薬や商品、サービス提案ができるようになると思います。
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今後、どのような形態のドラッグストアをされていきたいですか?
ここ最近では配置薬を始めています。配置薬といっても、お客様のご要望に合わせた薬、個々のお客様の声に合わせた配置薬を提供させていただいています。オーダーメイドで提供しています。配置薬を置いて下さっているご家庭には、お弁当の宅配サービスも始めています。これは取次店での仕事ではありますが、この「取り次ぎ」というのが重要だと思っています。御用聞きのように、当社を利用される方々が必要なものを、様々なサービスと手を取り合って商品をお届けできればと考えています。配置薬は、お客様のご自宅に出向いて必要であるものが何かまで聴き取ることができます。様々なニーズを引き出して、薬以外に必要なものであれば他業種と連携を取って必要なところにサービスを提供することが大切な時代となっています。当社は、これからこの点に着目し、時代のニーズをいち早く掴みながら前に進んでいきます。